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いま多くのIT企業が沖縄に目を向ける理由



日本企業がアジアへ進出する際の新拠点に!

いま多くのIT企業が沖縄に目を向ける理由

2015.01.30 Fri

 2014年の一年間で705万6,200人と過去最高の観光客を集めるなど、日本有数の観光地として知られている沖縄県。近年では数々の施策が奏功し、IT企業が新たなビジネス拠点として注目し始めています。そこで今回は沖縄県商工労働部情報産業振興課の課長である仲栄真均氏、同課基盤整備班班長の盛田光尚氏、同班の主任技師の大嶺寛氏に、沖縄県におけるIT関連の施策についてお話を伺いました。

多くのIT企業が沖縄に拠点を開設

スマートフォンやタブレット端末で気軽に楽しめるソーシャルゲームが市場を大きく伸ばし、また日本独自の動画配信サービスが広まるなど、日本国内においてもインターネットを軸としたIT産業が成長を続けています。とはいえ、日本の人口は約1億2千万人であり、市場規模としては決して大きいわけではありません。これからの成長を考えたとき、そうしたIT企業が世界に目を向けるのは当然の流れであると言えるでしょう。

そのグローバル進出を狙う際に、国内の拠点として、いま多くのIT企業が熱い視線を投げかけているのが沖縄です。そもそも沖縄は、13億人の人口を抱える中国、そして域内人口が6億人を超えるバンコクやフィリピン、マレーシアなどのASEAN地域に近いという地理的なメリットがあり、国内においてはこれらの国々へ向けたサービスを展開する拠点として最適な土地となっているのです。

実際にIT関連企業の沖縄への立地は2001年以降急速な勢いで増加しています。2001年までは41社に過ぎませんでしたが、2013年にはその7倍以上の301社が沖縄に拠点を展開しています。多くの企業が沖縄での拠点開設にメリットを感じていることが分かるのではないでしょうか。

もちろん、地理的に中国やASEANに近いというアジアの玄関口としての強み以外にも、多くのIT関連企業が沖縄でビジネスを展開している理由があるのです。まずは人口増加率が高く、年少人口は全国一であるなど、労働力が豊富であることが挙げられます。また災害対策を考えたとき、大都市圏から離れていることに加え、海底プレートが本州とは異なる沖縄は同時被災のリスクが極めて小さく、バックアップ拠点としても最適です。近代的地震観測が開始されて以来、震度5強以上の地震を観測したことがない事実も安心材料でしょう。

さらに平均気温が約23度と高いにもかかわらず、35度を超える猛暑日がほとんどないという、比較的過ごしやすい気候であること。そして、世界中の観光客が感嘆する美しい海に囲まれていることも多くの人々を魅了している沖縄県の魅力の一つです。とりわけ近年では、従業員のワークライフバランスの改善が多くの企業において重要な命題となっていますが、沖縄であればオン、オフ共に充実した毎日を過ごすことができます。

 

沖縄県におけるIT施策の中心地“IT津梁パーク”

ソフト、ハードの両面で、積極的な行政の支援が受けられることも、ビジネス拠点としてとらえた場合の沖縄の魅力と言えるでしょう。もともと沖縄は、1999年頃から行政支援のもとコールセンターの立地に力を入れてきました。ホスピタリティ溢れる県民性により、コールセンターの集積地として日本一となった今、次なるステージとしてより高度な事業を展開することを視野に入れ、施策を充実させているという背景があります。

具体的には、まずソフト面において、沖縄に立地したIT企業の人材育成を支援し、県内IT技術者の知識・技術の高度化を図る「IT人材力育成強化事業(iTAP)」や、ベトナム、ミャンマーなどアジア地域のIT経営者や技術者を招聘し、交流を図ることで人的ネットワークを構築する「アジアIT人材交流促進事業」、将来のIT人材の供給を促進するため、IT産業の広報イベントの開催やIT企業と学生の相互交流を図る「IT産業人材確保支援事業(IT津梁まつり)」など、各種人材育成および研修支援制度を整備しています。さらに県外の優秀なIT技術者の沖縄での就職を支援する「U・Iターン技術者確保支援事業」など、沖縄におけるIT技術者のレベルアップにつながる施策が次々と展開されているのです。

一方ハード面において中心的役割を担っているのが、那覇空港から自動車で約45分の距離にある、「沖縄IT津梁(しんりょう)パーク」です。この施設について、仲栄真均氏は次のように話します。

「沖縄IT津梁パークは、沖縄県が国内外の情報通信関連産業の一大拠点の形成を目指して、うるま市の中城湾港新港地区に開発しているビッグプロジェクトです。フラグシップ施設となる2つの「中核機能支援施設」があるほか、モバイル機器や情報家電HEMS(Home Energy Management System)などの検証施設である「情報通信機器検証拠点施設」や、民間企業の立地を支援する「企業立地促進センター」、民間企業の資金やノウハウで建設し、それを沖縄県が15年間一括で借り上げ、IT企業にリースする「企業集積施設」などがあります。

この企業集積施設に入居を希望する企業は、入居申請書を提出した後、沖縄県と施設の規模を決めてディベロッパーを公募・選定し、そのディベロッパーが自らの資金で建設します。それを沖縄県が一括で借り上げることでディベロッパーのリスクを負担する、PFI(Private Finance Initiative:民間の資金や技術などを活かして公共サービスを提供する手法)に近い形で運用されていることも沖縄IT津梁パークの特長でしょう。入居第一号となったのは株式会社ディノス・セシールコミュニケーションズで、昨年8月には株式会社NTTデータも共用を開始、そして現在は三号棟を建設中と、多くの企業がIT津梁パークに拠点を開設しています。実際、中核機能支援施設を含めると、すでに24社(2014年12月現在)が共用し、約1,700名の雇用が生まれています。

ちなみに「津梁」にはアジアとの架け橋という意味があるとのことで、実際に沖縄とアジアを結ぶための施設として「アジアIT研修センター」が建造されたと仲栄真氏は続けます。

「アジアIT研修センターは県内企業のアジア進出の足掛かりとして建築した施設であり、アジア企業と共同で行うOJT研修を通して、アジア各国との架け橋となる高度なIT人材を育成することを目的としています。すでにミャンマーやベトナム、中国などの国の技術者を招き、ネットワーク構築を学んでいただくといった取り組みを始めています」

さらに沖縄県は、一定の条件を満たせば沖縄と本土間の通信費の一部を支援する「新情報通信費低減化支援事業(PDF)」という支援事業も行っています。

この支援事業を利用すれば、沖縄IT津梁パークのある沖縄本島、あるいは石垣島や宮古島などの先島諸島と日本各地をVPNサービス等で接続する際、企業側の負担はわずか4分の1に抑えられます。たとえば東京に本社があり、アジア進出の拠点として沖縄IT津梁パークを利用するといった際、この制度を利用することで両拠点間の通信費を大幅に削減することができるという極めて魅力的な制度です。

沖縄県では、税制面での優遇が受けられる「情報通信産業等振興税制(PDF)」も整備しています。これはソフトウェア業や情報処理・提供サービス業、インターネット付随サービス業、情報通信技術利用事業などを行う企業に対し、国税と県税、市町村税において優遇を行うもの。また「情報通信産業特別地区」に指定された那覇・浦添地区や名護・宜野座地区、うるま地区に法人を新設した場合、設立後10年間、40%に相当する法人所得を損金に算入できる制度もあります。資金を人材やハード・ソフトに積極的に投資したいと考えている企業にとっては、魅力的な制度でしょう。

 

沖縄と、首都圏、アジアを低遅延で結ぶ海底光ケーブル

沖縄県ではデータセンターやネットワークといったクラウド基盤の整備にも意欲的に取り組んでいます。その1つ目の事業は、「沖縄情報通信センター(PDF)」の建設です(2015年3月竣工予定)。これは、300ラック規模のサーバールームを収容する情報管理棟、ビジネス棟、エネルギー棟を備える総合的な情報通信センターで、沖縄IT津梁パークの近くに整備しています。

この沖縄情報通信センターのほか、宜野座にある「宜野座村ITオペレーションパーク」など、官民のデータセンターなどをつなぐのが2つ目の事業である「沖縄クラウドネットワーク整備事業(PDF)」です。この事業で整備するネットワークは、データセンター以外にも、沖縄IT津梁パークや恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)などを接続し、県内データセンター間通信やインターネット接続通信コストの低減化、国際情報通信ハブの形成促進を目指しています。

そして3つ目の事業が「アジア情報通信ハブ形成促進事業(PDF)」です。これは首都圏や香港、シンガポールを結ぶ海底光ケーブルを沖縄に陸揚げする一大プロジェクトです。

大嶺寛氏は、この事業の意義を次のように説明しました。

「従来、沖縄とアジア各地との通信はまず東京に行き、そこで折り返す形になっていました。そのため沖縄は物理的にアジアと近い位置でありながら、ネットワーク遅延の影響を少なからず受けていました。しかし今回、新たに沖縄に陸揚げされる海底光ケーブルを活用することによって、沖縄からアジア各地や首都圏と直接通信することが可能になり、低遅延でアクセスすることができるようになります。その意味で、今回の海底光ケーブル事業は非常に画期的であると考えています。これにより、たとえばアジア各国向けにビジネスを展開したりサービスを提供したりする際、沖縄に拠点を置くことで快適に通信が行えるようになります。このように本事業には、ビジネス拠点としての沖縄の優位性を高めるという大きな意味があるのです」

仲栄真氏はこれらの環境整備の目的を次のように説明しました。

「行政の役割はエンジンをかけるためのセルモーターを回すことだと考えています。我々がセルモーターを回し、民間のエンジンが始動すれば、あとは民間の力で回っていく。このようにエンジンが掛かっていない分野に対し、我々がセルモーターを回すべく頑張っています」

インターネット上でグローバルにサービスを展開することを考えたとき、ネットワーク遅延は大きな問題となります。たとえばソーシャルゲームであれば、ネットワーク遅延が大きくなればそれだけレスポンスも低下し、ユーザーが快適にゲームを楽しめないということにもなりかねません。新たな海底光ケーブルの敷設により、沖縄からアジア各国のユーザーへ快適に楽しめるソーシャルゲームを提供することが可能になるわけです。

沖縄と香港を結ぶ既存サービス「沖縄GIXサービス」との冗長構成が可能である点も見逃せません。そもそも沖縄は先述の通り大規模地震が少ないことに加え、ネットワークの冗長化が実現することで、災害に強いバックアップ拠点を構築することができます。

この沖縄県に陸揚げされた海底光ケーブルを利用した、エンドユーザーへのサービス提供は、2015年秋以降に予定されています。これにより期待されるビジネスとしては、二重化されたネットワークと大規模地震の少ない沖縄県の特性を活かした、DR、BCP対策としてのバックアップサービスの提供がまず挙げられるでしょう。アジア各地へのアクセスが強化されることから、業務管理サーバーを沖縄に設置し、各種業務を沖縄で一括して行うことによって効率化を図るオペレーションサービスの提供、そして大容量・低遅延なネットワークであることを活かしたコンテンツ配信サービスなども視野に入ります。

 

「これからは日本のフロントランナーに」

 沖縄県の商工労働部情報産業振興課は、IT企業を軸に企業誘致を行っており、これまでにさまざまな施策を展開し、大きな成果を挙げてきました。これらにより「沖縄がアジア有数のハブになる」と盛田光尚氏は語ります。

「現在沖縄県ではIT関連産業についてまとめた『おきなわSmart Hub構想(PDF)』をベースに、アジア有数の国際情報通信ハブを形成すべく、さまざまな施策を展開しています。沖縄IT津梁パークやクラウド環境、沖縄国際情報通信基盤の整備などといったインフラ面での基盤整備、そして人材育成を両輪として、アジア有数のハブを目指していきます」

最後に今後の目標について伺うと、仲栄真氏から次のような答えが返ってきました。

「これまでの4次にわたる沖縄振興施策により、社会的なインフラなど一定のものは整備できました。これからは日本のフロントランナーとして、民間企業とのコラボレーションを推進しながらIT産業や観光リゾート産業などの分野で、沖縄らしさを活かし、日本の繁栄に貢献できる、そのような地域になることを目指します」

グローバル化を目指す多くの日本企業が海外の展開先としてまず検討するのは日本に近いアジア各国でしょう。それらアジアの国々でビジネスを行う際、地理的に近いというだけでなく、IT環境の整備も進められている沖縄が、今後は重要な拠点となっていくのではないでしょうか。また、アジア各国のIT企業が日本展開を考える際の拠点としても、沖縄はさらに有望となっていくでしょう。

 ここまで解説した各種施策からも分かるとおり、沖縄県にはインフラと人材の両輪で新しい取り組みを積極的に行う姿勢があり、実際に大きな成果を挙げています。さらに沖縄は日本を含めたアジア各国を結ぶ「万国津梁」、つまり架け橋となり得る場所であることを考えると、ビジネスのグローバル展開において重要な場所であることは間違いありません。これらの要素をつなげて考えていけば、今後のビジネスにおいて沖縄に拠点を持つことは、企業にとって大きな意味を持つことになるでしょう。





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